夢を見過ぎ?

秩父樹液生産協同組合代表理事  山 中 敬 久

 一昨年6月20日に組合を設立して、2 回目の樹液採取の季節を迎えています。樹液利用という着眼点が新鮮だったのか、 いろんな方が興味を持ち応援して頂いております。建築材料としてのスギ、ヒノキの林業が需要低迷で袋小路に入っている現状では尚更、樹液利用が一筋の光明に見えるのでしょう。樹液利用が樹液産業になるかどうかは私には何とも言えませんが、産業に持って行くというのが組合のメインテーマであり、 長期に渉る悪戦苦闘の始まりであります。
 今年からスギやヒノキの山を間伐してカエデを植林する事業を開始します。そのため森林経営計画を樹立するのですが、その事務作業、境界立ち会い、測量、間伐計画、植林、シカ除け柵、更に間伐したスギやヒノキの有利な販売戦略の模索など重い事業が幾つも控えています。
 日本の林業が抱えている袋小路を打破し、針葉樹と広葉樹が美しく複層する森林を目指して、20年から30年後に採れる予定のカエデの苗木を植える。その樹液は果たしてその時、採算の合う値段で売れるかどうかは判りませんが、いまそのマネージメントをやっておこうというのが、「欲の深い、夢を見過ぎ?」の組合です。私たちは、多くの皆様の励ましに支えられながら、夢のように素晴らしい森林を育てていきたいと考えています。どうぞ、今後ともご支援を賜りますようお願い申し上げます。

イタヤカエデの大樹  育て続けてきたスギの美林

親しまれる森の恵み

秩父樹液生産協同組合へのエール

株式会社GNH工房 代表取締役  大 山 敏 雄

 「文明の前には森林があり、文明の後には砂漠が残る」という言葉を残したのは、フランスの政治家・作家である、フランソワ・ルネ・ド・シャトーブリアンです。われわれ日本人は自然との調和を大切にし、それを基に生活や産業を築いてきました。
 しかし、グローバル化が進み、経済至上主義が席巻する昨今、日本の林業は破綻の様相を呈しているように思います。金銭評価が難しい豊かさの質を左右する公共財としての森林と水をどの様に扱うのかが問われています。森林を守り育てるには、そこでの生活が成りたつ(雇用)ことが前提となり、「日本の社会の仕組み」の欠点に手を入れていかねばなりません。「日本の社会の仕組み」に踏み込むのは、今生きている我々自身が時代の変化に合わせて変えなければ、誰かがやってくれる、何処から降ってくるものではないからです。また、問題解決は、生の現場から得られた総意工夫でしか解決できません。机上の空論とは言いませんが、補助金や諸規則などの社会制度設計は本質に触れているのでしょうか。
 二十一世紀に入り、地球規模での"パワーシフト"が起きている様に思います。パワーとは軍事力や経済力だけでなく、複合的で多次元的なものを総合してみた時の話しで、時代が大きく変わるときに起きると言われています。東北大震災から価値観のシフトが顕著になってきており、"経済至上主義で利益は自分のポケットに入れるだけ"から"心の豊かさを重視する"価値観への転換が進んでいます。地方は疲弊し、劣化しています。わが国土のおよそ七割は森林です。これまできれいな空気や水を頂けたのは、この森林のおかげです。
 一方、GDP寄与率はわずか1%しかありません。秩父樹液生産協同組合の、理念とそれを支えるイノベーションの両輪に支えられている取組みは、まさにパワーシフトに合致し、文明を育み、心の豊かさと自然との調和を図り、自らで問題を解決しようとする、時代の先端的な活動といえます。 樹液を通して森林と水を守り、しかも新しいビジネスの中心的な活動です。樹液からメープルシロップを作り、樹液を料理や加工食品の原料に、また、いわゆる第三のみつ(商標:登録第5639072号)、それを原料とするハニーワインの製造、さらに蜜蝋からのローソク製造等々、新しいビジネスがイノベーションを背景に展開していくでしょう。それは、雇用を創出する活動でもあります。 この秩父森林ビジネスモデルが全国にひろがり、秩父の魅力を高める事とともに、日本の豊かさを高める事に貢献し、さらに全世界に高齢社会の森林ビジネスモデルとして広がっていくと確信しています。

和メープルを堪能!樹液から料理まで

野菜ソムリエ  牧 野 悦 子

 まだ雪深い2 月。「カエデの森」へ伺いました。初めてみるメー プルシロップの現場に興奮し寒さも忘れるほど。樹液の出る時期、出る量、またその見極めなど詳細にご教授いただきました。長年、足で樹のデータをとり、解析し次年へ活かしてくアナログでデジタルな作業。腰を据えた自然との対話が必要な森の仕事と感じました。樹から出る澄んだ水のように無色透明な液体がメープルシロップになるとはこの時点では到底思えません。
 採取地から場所を移し、8 種類の樹液を試飲させていただきました。かすかなフレーバーとほのかな甘みがメープルシロップを感じさせます。「楓からのうまい水」といった感じでしょうか?特別にいただき自宅で煮詰め、舐めてみるとまさにメープルシロップ!絶品でした!自家製ピザにかけて美味しくいただきました。わずかな量になりましたが贅沢な山の恵みを堪能しました。その後のランチでは和メープル特別メニューをいただき、デザートだけでなく肉や魚にも合うことに驚きました。雪山に縁がなかった私ですが、新たな山の食を発見する貴重で素敵な1 日を過ごすことができました。ありがとうございました。
 私は野菜ソムリエとして食に携わる職についているので、この「和メープル」と野菜・果物がどうコラボできるか、どう活かしていけるかを探求するのが今後の楽しみです。生産量が上がり森の仕事として、そして、和メープルとして認知され「秩父発のメープルシロップ」として手軽に購入できるようになることを希望します。

□新たな森づくりへの挑戦

 昨年6 月から秩父市大滝地区の森林50 ヘクタールを対象に森林経営計画の策定を進めています。スギやヒノキの森林を適 切に管理しながら、20 年をかけて豊かなカエデの森を創る取り組みです。
 「森林経営計画制度」は、平成24 年4 月の森林法の改正に伴い、森林にかかわる者は、一定のまとまった面積の森林に対して長期的な経営計画の策定と確実な実施が求められようになりました。幾世代をかけて育てられた日本の森林は、ようやく成熟し、その利用と適切な管理が求められています。組合では、スギやヒノキの間伐を行いながら、カエデの森づくりに着手しました。自然分布に依存したカエデの樹液活用が、数十年後には美しい景観と安定した樹液生産となることを構想しています。
 対象の森林は、三峰神社から北に秩父市大滝総合支所(旧大滝村役場)のある落合に至る50 ヘクタールの山林です。14 名の所有者の協力を得ながら、平成26 年度は約7ヘクタール、平成27 年度には約10 ヘクタールの間伐を実施し、間伐の後には今年秋にカエデの植林を行う計画です。


境界確認の立会い     確認された境界の杭打ち作業